第一章
【死ねない恐怖】
バキバキバキ!
雷光が、一行の近くの木に直撃する。
「うわあぁ!」
「早くあの屋敷へ!」
「走れ!」
「廃屋じゃないことを願おう!」
4人は、赤いトタンが今にもはがれ落ち、崩れてしまいそうな屋敷を目指して走る。
辺りは雨が降っており、四人の下半身ははねちった泥が染みついていた。
「ついた・・・・」
【中尾崎 健太】(なかおざき けんた)が息を切らして言う。
「とりあえずノックしてみましょうよ」
その妹の【中尾崎 久子】(なかおざき ひさこ)が言う。
「人・・・・いるのかなあ?」
2人の友人、【新霧 牙】(にいむ きば)は少し落ち着きを無くしている。
牙の青いスニーカーと、チャームポイントと言って前髪をたてていたのだが、もう跡形もない
ドカァーン!!
「うわああ!!」
青い雷が降り注ぐ。
「早く入ろうぜ。」
いつも冷静沈着なこのクールガイは【光音寺 満】(こうおんじ みつる)
「そうだな!急げ!」
ガチャ・・・・
ギイイイィィィ・・・・
重苦しい音とともに、扉は暗黒への道を開いてくれた・・・。
〜静寂〜
「おーい!誰かいますか〜?」
このせりふをもう15分も叫び続けている。
「なあ・・・」
(おっ!クールガイがやっと口を開いたぞ!)
「これだけ叫んでも誰もいないって事は、ここは廃屋って事でいいんじゃないか?」
満の【青いショートヘア】が揺れ動く。
「・・・・・・・」
屋敷に静寂が広がっていく。
「そうだな・・・」
牙が口を開いた。
「ってことは、次に心配することは、食料と寝床ね。」
(妹よ、状況をわかりやすく説明してくれて助かったよ。)
「じゃ!決まり!二手に分かれて、食料と寝床を探す!」
牙は状況を楽しんでいるようだ。
牙の前髪はもう直って、天にむかって立っている。
「じゃあ、俺と久子は食料。牙と満は寝床を探してきてくれ。」
「分かった。野犬とかには気をつけろよ。それとこの屋敷3階建てみたいだから
上の階の廊下とか崩れるかもしれない。慎重に行けよ。」
「分かった。行くぞ久子。」
「じゃあ、また後で!」
【牙と満と別れた】
俺たちは食料を探すため、玄関から二階へ上がり、東へ行き、階段を下り、西へ行った。
「多分、一階にキッチンがあると思うんだけど・・・」
「野犬とかが食い荒らしてたりして。」
久子は楽しそうに言う。
「ばかいえ、犬が冷蔵庫の戸を開けられるかよ。」
「それもそうねぇ・・・。」
「それにしても部屋がいっぱいあるなぁ。」
一つ目のドアにさしあたった。
この屋敷は、玄関を入ると、すぐに二階への階段が二つある。
その階段の真ん中は食堂らしい。
その玄関の左右にドアがあり、廊下に続いているという形だ。
そして突き当たりに階段があり、そこを上ると、3階への階段と廊下がある。
二階の廊下は、進んでいくと、ちょうど玄関の上の場所で一階へ続く階段が現れる。
そこを無視して進み、突き当たりへ行くとまたもや一階と三階への階段が現れる。
つまり一階は玄関から二つの廊下が延びており、それぞれ突き当たりに階段があり、
二階へと続く。
中尾崎兄妹は玄関から東側の廊下を探索していた。
そして牙と満は西側の廊下を進んでいった。
「寝床ねぇなあ・・・」
「ま、正確には、あるが寝られない。」
そう、この屋敷の一階と二階の部屋全てなぜかベッドなどが切り刻まれていた。
「おい、三階に上がる前に携帯で健太達に連絡とっておいた方が良くないか?」
「・・・・そうだな。もう食料を見つけたかもしれないしな。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「圏外になっている」
「なんだって!?そんなはずは!」
牙があわてている。
俺も内心少しビビってる。
「そうだな・・・・。おかしいな。だってここは街中から5キロも離れていないからな。」
「やばい気がするな。」
「・・・・・・」
「何とかいってくれよぉ・・・」
「考え中だ。」
「・・・・・・・・・・・・」
「よし、一刻も早く、中尾崎達と合流し、この屋敷から出よう!」
「よっしきた!急ごうぜ!」
2人は暗黒へと走り出した。
ガサ・・・・
ガサガサ!
「・・・・・・・」
2人は沈黙した。
キッチンと思われる場所から妙な物音がするからだ。
そこのドアは少し開いており、光りの筋が廊下を照らしていた
健太は鉄の棒を握りしめた。
この棒はキッチンと間違えてカビくさいトイレで拾った物だった。
「お兄さん・・・・」
「分かってる。まず相手を確かめないと・・・・。ここの住人かもしれないだろ?」
「だってさっきあんなに呼びかけたのに・・・」
(分かってる・・・・。分かっているから少し黙ってくれ。)
ガサ・・・ガサ・・・
メキョ・・・
光が漏れているキッチンらしき部屋のドアへとそろりと近づいていく・・・・。
そのドアの隙間から見えたものは・・・・・
人だ・・・・。
やっぱりここの住人だったんだ!
ガチャ!
「こんばんわ!勝手に入ってすみません!何度呼んでも誰もでて・・・・こな・・」
俺は思わず絶句した。
振り返ったその顔は・・・・・・・・半分無かった。
頭のちょうど真ん中から右耳の半分ぐらいまで無かった。
正確にはえぐりとられたような感じだった。
そしてその傷口からピンク色の脳みそが揺れていた。
にやり・・・
その顔がとても嬉しそうに笑った。
次の瞬間・・・・・
「グギャゴゴオオォォゲエエェ!!」
その怪物が叫んだ瞬間。
怪物の右腕が残像を残して消えた。
「ひっ!」
思わずかがむと、後ろの方で轟音がした。
見ると、後ろにあった机や、台所用品が消し飛んでいた。
怪物が右腕をふるっただけで、辺りの物が吹っ飛んでいたのだった。
「兄さん!前!」
あわてて振り返ると、怪物が右腕を引っ込め、縦に振り下ろそうとしていた。
この鉄の棒で受け止めるか!?
受け止められるのか!?
否!
受け止めることは【死】
死ぬ・・・・?
こんなところで?
なぜ?
こんな怪物に出会ってしまったからだ。
なぜ!?
なぜこいつは生きている!!
顔半分無いんだぞ!
ヒュンッ!
音がし、腕は振り下ろされた。
とっさに避けた。
ドッゴオオォォン!
またも轟音が屋敷中に響き渡り、床は吹き飛んだ!
やられる。
逃げないと!
「久子!!逃げよう!死ぬ!」
「兄さん!これを!」
そういって投げ渡された物を見ると・・・・
拳銃だった。
そうだ。
俺と久子は刑事だったんだ。
くそ!
俺のは車においてきてしまった。
大体あの車がこの屋敷の近くでエンストなんかおこすからこんな目に・・・
いや、今はそんなことをいっている場合ではない・・・・
闘うか?
この拳銃で・・・・・・・・
「久子!逃げるぞ!走れ!」
俺たちはキッチンを転がるようにして出て、廊下を走り出した。
ふと一つのことが頭に浮かぶ。
(牙と満は大丈夫だろうか・・・?)
パリイィン!
火災が発生したときに、ドアを打ち破るために廊下においてある手斧を取った。
「ぐああ!痛い!脚をやられた!」
「大丈夫だ!お前やられた後6歩ぐらい走ってたから。」
「くそ!ダメだ!こっちの廊下から一階へ下りるのは止そう!」
牙と満達は、東側または玄関の真上の階段を下り、
中尾崎達と合流しようと考えていた。
「そうだな・・・・ぐっ!」
敵の一撃を斧で受け流す。
なぜこいつはこんな強力な一撃を繰り出せるんだ!?
右足がふとももから無いというのに。
左利きだからか?
そんな冗談が頭に浮かぶ。
左利きでも脚が一本無ければ壁を吹っ飛ばすなんてマネはできっこない。
「先に行け!」
「そんな事できるか!」
「お前が先に逃げてくれないと俺が逃げられないんだよ!」
「・・・・・・・分かった!絶対車のところで会おうな!」
牙はやられた右足を押さえながら走っていく。
「ふふふ、来な!醜い化け物め!」
グオオオオオオ!!
怪物は咆吼した。
ハァハァ・・・・・
逃げないと・・・・
牙は必死に走った。
そしてようやく西側の階段へと来ることができた(現在地:二階)
「・・・・・・・?」
階段を下りて一階へ行こうとしたとき、階段を誰かが下りてきた。
「誰だ!?」
牙は叫ぶ。
強気で言ったつもりだが、声は震えていた。
メキョ・・・・・
妙な音が聞こえる・・・・
「・・・・・・健太か?」
・・・・・・・・・
その人物は動かない。
「健太なのか?返事してくれ!」
・・・・・・・・・
「おい!返事しろばぎゃ!」
息を吸って、大声でどなろうとしたが、台詞は最後まで言えなかった。
その人物が左腕を大きく振るい、牙の首を切断したからだ
牙の意識は一瞬でとぎれ、
自分が死んだことを理解できずに闇へと堕ちた。
そこには牙の肉体と首が転がっていた・・・・・・・
【つづく】